この記事で解決すること
- 不動産を贈与したときにかかる贈与税の仕組みがわかる
- 相続と贈与の違いを税金面から整理できる
- 生前贈与を検討する際の注意点が理解できる
不動産にかかる税金は、
- 取得時の不動産取得税
- 保有中の固定資産税・都市計画税
- 相続時の相続税
- 売却時の譲渡所得税
だけではありません。
生前に不動産を移す場合、「贈与税」が問題になります。
相続との違いを理解せずに贈与すると、税負担が大きくなることがあります。
取得時の税金については「不動産取得税を解説した記事」、相続との違いは「相続税と不動産評価を解説した記事」で整理しています。本記事では贈与税に特化して解説します。
全体像を体系的に理解したい方は、「不動産にかかる税金の全体像をまとめた記事」を起点に読むことをおすすめします。
贈与税とは何か

贈与税は「もらった側」にかかる税金
贈与税は、不動産を「もらった人」に課税されます。
ここを誤解している方が多いですが、税金を払うのは渡した人ではなく、受け取った人です。
例えば、
- 親が子に土地を無償で譲る
この場合、子に贈与税がかかります。
課税の基本構造は次のとおりです。
贈与税 = (贈与財産の評価額 − 基礎控除)× 税率
基礎控除は年間110万円です。
つまり、年間110万円までは非課税です。
しかし、不動産は評価額が高いため、110万円を超えるケースがほとんどです。
例えば、
- 土地評価額 2,000万円
の場合、
2,000万円 − 110万円 = 1,890万円
が課税対象になります。
贈与税は累進課税で、税率は非常に高くなります。
相続税より税率が高い理由
贈与税は相続税より税率が高く設定されています。
これは、
- 生前に財産を分散して相続税を回避する
- 形式的な名義変更を防ぐ
という目的があるためです。
税率は最大55%です。
例えば、
課税価格1,500万円の場合、税額は数百万円になることもあります。
そのため、
「節税のためにとりあえず贈与する」
という判断は危険です。
相続税の仕組みについては「相続税と不動産評価を解説した記事」で詳しく説明しています。
不動産の評価は相続税評価を使う
贈与税における不動産評価は、相続税評価と同じ方法で行われます。
土地は、
- 路線価方式
- 倍率方式
建物は、
- 固定資産税評価額
を使います。
つまり、市場価格ではなく、税務上の評価額が基準になります。
例えば、
- 実勢価格 3,000万円
- 相続税評価 2,400万円
であれば、贈与税も2,400万円を基準に計算されます。
評価の詳細は「相続税と不動産評価を解説した記事」で整理しています。
暦年課税と相続時精算課税

暦年課税とは
贈与税の基本制度が「暦年課税」です。
毎年1月1日から12月31日までの贈与額を合算し、110万円の基礎控除を差し引いて課税します。
例えば、
- 1年目 100万円
- 2年目 100万円
- 3年目 100万円
であれば、各年110万円以下なので非課税です。
これを利用して、毎年少しずつ財産を移転する方法があります。
ただし、不動産は分割が難しいため、現実的には共有持分の移転という形になります。
共有にすると、
- 将来の売却が難しくなる
- 固定資産税の負担が複雑になる
といった問題も生じます。
固定資産税の仕組みについては「固定資産税を解説した記事」で確認してください。
相続時精算課税とは
もう一つの制度が「相続時精算課税制度」です。
この制度では、
- 2,500万円まで非課税
- 超過部分に20%課税
となります。
一見すると有利に見えますが、将来相続が発生したときに合算されます。
つまり、
- 生前に贈与
- 相続時に再計算
という仕組みです。
若年世代への資産移転を促進する制度ですが、慎重な検討が必要です。
相続との関係は「相続税と不動産評価を解説した記事」で詳しく整理しています。
どちらを選ぶべきか
暦年課税と相続時精算課税のどちらが有利かは、状況によって異なります。
考慮すべきポイントは次のとおりです。
- 将来の相続財産総額
- 不動産の評価上昇可能性
- 受贈者の年齢
- 今後の売却予定
例えば、
- 将来値上がりしそうな土地
- 収益物件
であれば、早めに移転するメリットがあります。
一方で、評価が下がる可能性がある場合は慎重になるべきです。
さらに、贈与後に売却すると譲渡所得税が発生します。売却税制については「不動産の譲渡所得税を解説した記事」で確認してください。
不動産贈与で発生する他の税金

不動産取得税はかかるのか
不動産を贈与で取得した場合、不動産取得税は原則として課税されます。
「家族間だから税金はかからない」と誤解されがちですが、贈与も立派な取得です。
不動産取得税の計算は、
固定資産税評価額 × 税率
です。
例えば、
- 固定資産税評価額 1,500万円
- 税率 3%
の場合、
1,500万円 × 3% = 45万円
となります。
相続による取得は原則非課税ですが、贈与は課税対象です。
取得税の仕組みは「不動産取得税を解説した記事」で詳しく説明しています。
贈与税だけでなく、取得税もかかる点は必ず押さえてください。
登録免許税も必要
名義変更には登録免許税がかかります。
税率は、
固定資産税評価額 × 2%
が原則です。
例えば、
評価額 2,000万円
の場合、
2,000万円 × 2% = 40万円
です。
つまり、
- 贈与税
- 不動産取得税
- 登録免許税
が同時に発生する可能性があります。
これらを合計すると、想定以上の資金が必要になります。
贈与後の固定資産税は誰が払う?
贈与後の固定資産税は、新しい所有者が負担します。
固定資産税は1月1日時点の所有者に課税されます。
例えば、
- 2025年6月に贈与
した場合、その年の固定資産税は旧所有者に課税されますが、翌年からは新所有者に課税されます。
固定資産税の仕組みは「固定資産税を解説した記事」で詳しく整理しています。
また、土地に住宅がある場合は「小規模住宅用地特例」が適用されますが、用途変更や解体で外れることがあります。
土地特例については「小規模住宅用地特例を解説した記事」で確認してください。
贈与の落とし穴

共有名義にするとどうなる?
贈与で少しずつ持分移転を行うと、共有名義になります。
例えば、
- 親50%
- 子50%
のような形です。
共有には次のリスクがあります。
- 売却に全員の同意が必要
- 修繕や建替えで意見対立
- 相続が発生するとさらに共有者が増える
共有状態が複雑化すると、将来の売却が困難になります。
また、固定資産税の納税通知は代表者に届くため、実務上の調整が必要になります。
保有税の基本は「固定資産税を解説した記事」で整理しています。
贈与後すぐ売却するとどうなる?
贈与後すぐに売却すると、譲渡所得税が発生します。
しかも取得費は「贈与者の取得費を引き継ぐ」仕組みです。
例えば、
- 親が1,000万円で購入
- 子に贈与
- 子が3,000万円で売却
取得費は1,000万円です。
譲渡所得は、
3,000万円 − 1,000万円 = 2,000万円
となります。
さらに保有期間も引き継ぐため、短期か長期かの判定も注意が必要です。
売却税制の詳細は「不動産の譲渡所得税を解説した記事」で確認してください。
贈与してから売却することが必ずしも有利とは限りません。
相続との比較が重要
贈与が有利か相続が有利かはケースバイケースです。
例えば、
- 相続税がかからない規模の家庭
- 基礎控除内に収まる
場合は、無理に贈与する必要はありません。
一方で、
- 将来大きな値上がりが見込まれる土地
- 収益物件
などは早期移転のメリットがあります。
相続税評価や小規模宅地等の特例も考慮する必要があります。相続税の仕組みは「相続税と不動産評価を解説した記事」で詳しく整理しています。
不動産税制は、
取得 → 保有 → 贈与 → 相続 → 売却
という流れで理解する必要があります。
全体像を整理したい方は、「不動産にかかる税金の全体像をまとめた記事」を起点にシリーズを通読してください。
生前贈与で失敗しないための視点

生前贈与は“早すぎても遅すぎても”危険
生前贈与は、タイミングが極めて重要です。
よくある誤解は、
- とりあえず早く贈与すれば有利
- 相続直前にまとめて移せばよい
という考え方です。
しかし、
- 相続開始前一定期間内の贈与は持ち戻し対象
- 形式的な贈与は否認リスク
- 将来の売却時に譲渡所得税が増える可能性
といった問題があります。
例えば、
- 親が1,000万円で購入
- 子に贈与
- 数年後3,000万円で売却
取得費は1,000万円のまま引き継がれます。
その結果、
3,000万円 − 1,000万円 = 2,000万円
が譲渡所得となります。
売却税制の詳細は「不動産の譲渡所得税を解説した記事」で確認してください。
贈与だけを見て判断すると、出口で想定外の税負担が発生します。
住宅取得資金贈与の特例
一定の条件を満たす場合、住宅取得資金の贈与には非課税枠があります。
主な要件は次のとおりです。
- 受贈者が一定年齢以下
- 自己居住用住宅の取得
- 床面積要件を満たす
この制度を活用すれば、数百万円から1,000万円超の非課税枠が使える場合があります。
ただし、
- 住宅完成期限
- 入居期限
- 所得制限
などの条件があります。
また、住宅取得後は固定資産税や都市計画税が発生します。保有税の構造は「固定資産税を解説した記事」「都市計画税を解説した記事」で整理しています。
取得後のランニングコストまで見据えた判断が必要です。
贈与・相続・売却は一体で考える
不動産税制は、単発で考えると必ずどこかで矛盾が生じます。
例えば、
- 贈与税を減らした
- しかし相続時に合算された
- さらに売却時に高額な譲渡所得税
というケースもあります。
重要なのは、
取得 → 保有 → 贈与 → 相続 → 売却
という流れで全体設計することです。
具体的には、
- 将来の相続税見込み額
- 小規模宅地等の特例適用可否
- 固定資産税の負担
- 売却予定の有無
を総合的に判断します。
相続税評価の詳細は「相続税と不動産評価を解説した記事」、土地特例は「小規模住宅用地特例を解説した記事」で確認してください。
そして最終的には、シリーズ全体を俯瞰する「不動産にかかる税金の全体像をまとめた記事」に戻ることで、取得から出口まで一本の線で理解できます。
まとめ
贈与税は、
- もらった側に課税
- 基礎控除110万円
- 相続税より高い累進税率
- 不動産取得税や登録免許税も発生
という特徴があります。
さらに、
- 取得費は引き継がれる
- 将来の売却税制に影響
- 相続との比較が不可欠
という点が重要です。
生前贈与は強力な手段ですが、単独では完結しません。
取得時の不動産取得税、
保有中の固定資産税と都市計画税、
相続税評価、
そして売却時の譲渡所得税。
これらを一体で設計することが本質です。
体系的に理解するためには、「不動産にかかる税金の全体像をまとめた記事」をハブに、本シリーズを通読してください。



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